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未来を実装するデザイン戦略|モビリティ・ファッション・パッケージの最新動向と「市場価値」への翻訳


技術革新や社会課題の複雑化に伴い、デザインに求められる役割は劇的に変化しています。単に製品の形状を整える意匠設計から、ビジネスモデルや社会システムそのものを構築する「広義のデザイン」へと領域が拡張しているのです。特に、大変革期にある「モビリティ」、持続可能性が至上命題となる「ファッション・アパレル」、そして消費者との最初の接点である「食品・飲料パッケージ」の3分野において、その傾向は顕著です。

多くの企業が優れた技術(シーズ)を持ちながら、それを顧客が求める体験や事業価値へと翻訳できずにいます。本記事では、これら3つの注目分野における最新のデザイン動向を解説するとともに、抽象的な技術やアイデアを具体的な市場価値へと変換するための戦略的アプローチについて、デザインエンジニアリングの視点から紐解きます。

1. モビリティデザインの最新トレンドと未来

自動車業界は100年に一度の変革期と言われ、CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)やMaaS(Mobility as a Service)といった概念が標準化しつつあります。これに伴い、モビリティデザインの焦点は「車両のスタイリング」から「移動体験(UX)の設計」へと大きくシフトしています。

1-1. 「所有」から「利用」へ:MaaS時代のUXデザイン

MaaSの普及により、車は「所有するステータスシンボル」から「移動するためのサービス空間」へと変化しています。これにより、デザインに求められる要件も変化しています。

比較項目従来のデザイン(内燃機関・所有モデル)MaaS時代のデザイン(電動化・サービスモデル)
価値基準走行性能、エクステリアの美しさ、所有満足度車内での過ごしやすさ、乗降のスムーズさ、サービスとの連携
ターゲットドライバー(運転者)中心乗員全員(パッセンジャー)、サービス利用者
空間設計エンジンや駆動系に制約されたレイアウトEV化によるフラットフロア、リビングのような居住空間
HMI運転操作に必要な計器類コンテンツ消費やリラックスのためのディスプレイ、音声操作

これからのモビリティデザインでは、移動中の時間をいかに豊かに過ごすかという「時間と空間の質」が問われます。自動運転技術の進展に伴い、車内はオフィスにも、エンターテインメント空間にも、休息の場にもなり得ます。デザイナーは、物理的なプロダクトだけでなく、そこで展開されるソフトウェアやサービスを含めたトータルなユーザー体験(UX)を設計する必要があります。

1-2. パーソナルモビリティとラストワンマイルの革新

都市部での移動や高齢者の移動支援として、電動キックボードや小型低速車などのマイクロモビリティ、パーソナルモビリティが注目されています。

  • 親しみやすさのデザイン: 歩行者と共存する空間を走行するため、威圧感を与えない丸みを帯びたフォルムや、周囲とのコミュニケーションを図るデザインが重要です。
  • 直感的な操作性: 免許返納後の高齢者など、機械操作に不慣れなユーザーでも安全に扱えるUI/UXデザインが必須となります。
  • 都市景観との調和: 公共空間に置かれるシェアリングサービスの機体などは、街の景観を乱さないノイズレスなデザインが求められます。

1-3. 83Designの視点:「How先行」の罠を回避するビジョン・ビジュアライズ

モビリティ分野では、センサー技術やAI、バッテリー技術などのR&D(研究開発)が先行しがちです。しかし、「すごい技術」が必ずしも「人が欲しがる移動手段」になるとは限りません。

多くの開発現場で直面するのが、「技術(How)はあるが、誰にどのような価値(Who/What)を提供すべきか定まっていない」という課題です。

Point: 技術起点の開発において重要なのは、スペックの追求ではなく、その技術が実現する「3〜5年後の未来の生活」を可視化することです。

私たち83Designは、「ビジョン・ビジュアライズ」というアプローチを用いて、技術ロードマップと社会変化を掛け合わせた「未来の製品群」をフォトリアルなCGや映像で描き出します。「この技術があれば、こんな移動体験が可能になる」という具体的な絵(ビジョン)を早期に共有することで、社内の合意形成を促し、技術開発の方向性を「顧客体験」へと修正することが可能になります。

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2. ファッション・アパレルにおけるデザインと持続可能性

ファッション産業は、環境負荷が高い産業の一つとして指摘されており、サステナビリティ(持続可能性)への対応が待ったなしの状況です。デザインは、素材選びから廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を再定義する役割を担っています。

2-1. サーキュラーデザイン(循環型デザイン)の実践

これまでの「作って、売って、捨てる」というリニア(直線)型のモデルから、資源を循環させるサーキュラー(循環)型のモデルへの転換が求められています。

  • モノマテリアル化: リサイクルを容易にするため、複合素材ではなく単一素材(モノマテリアル)で製品を構成する設計が進んでいます。
  • 分解設計: 修理やリサイクルをしやすくするために、パーツごとに分解しやすい構造を取り入れるアプローチです。
  • デジタルファッション: 物理的な衣服を製造する前に、3Dモデリングでサンプルを作成し、バーチャル試着を行うことで、サンプル廃棄や在庫ロスを削減するDX(デジタルトランスフォーメーション)もデザインの一環です。

2-2. 新素材のデザインと機能美

バイオマス素材、生分解性プラスチック、アップサイクル素材など、環境配慮型素材の開発が進んでいますが、これらの素材は従来の石油由来素材とは異なる特性を持っています。

  • 素材の特性を活かす: 自然素材特有の風合いや不均一さを「欠点」ではなく「個性」としてポジティブにデザインに落とし込む視点が必要です。
  • 経年変化(エイジング)のデザイン: 長く使うことで価値が増すような素材選びや加工技術も、製品寿命を延ばすサステナブルなデザイン戦略です。

2-3. 83Designの視点:エコシステム・ビルディング

サステナブルな素材や技術を開発したものの、「素材単体では売れない」「最終製品への落とし込み方がわからない」という課題を持つ素材メーカー様が増えています。これは「作る力(R&D)」はあるが「売る力(出口戦略)」が不足している状態です。

83Designでは、単に製品をデザインするだけでなく、その素材が活きるアプリケーション(用途)を探索し、ビジネスの座組までを設計する「エコシステム・ビルディング」を支援します。

  • パートナーシップの設計: 素材メーカーと製品ブランド、あるいはリサイクル業者を結びつけ、循環システム全体をデザインします。
  • 用途開発の可視化: その新素材を使うことで、どのような新しいライフスタイルや製品が生まれるのかをプロトタイプで具体化し、パートナー企業への提案力を高めます。

3. 食品・飲料パッケージデザインの視覚戦略

ECの普及やSNSの影響力増大により、パッケージデザインの役割は「中身の保護・表示」から「ブランド体験の入り口」「コミュニケーションツール」へと高度化しています。

3-1. 「映え」と「本質」の両立:視覚的インパクトの戦略

店頭の棚(シェルフ)やスマートフォンの画面上で、瞬時に消費者の目を引く「シェルフインパクト」は依然として重要ですが、表面的な派手さだけでは選ばれなくなっています。

視点デザインのポイント
視認性(Visibility)競合商品が並ぶ中で埋没しない色使い、タイポグラフィ、形状の差別化。
信頼性(Trust)商品の品質や安全性を直感的に伝える素材感や情報の整理。過度な誇張を避ける誠実さ。
シズル感(Sizzle)食品のおいしさや鮮度を想起させる写真、イラスト、質感表現。
フォトジェニックSNSでの拡散を意識した、撮影したくなる世界観の構築。

3-2. アンボクシング(開封体験)のデザイン

D2C(Direct to Consumer)ブランドの台頭により、商品が自宅に届き、箱を開ける瞬間の体験(Unboxing Experience)が重視されています。

  • ストーリーテリング: 外箱から内装、緩衝材、同梱のリーフレットに至るまで、ブランドのメッセージや物語を感じさせる一貫したデザインが必要です。
  • 廃棄のしやすさ: 開封後のゴミの分別しやすさや、嵩張らない設計も、ユーザー体験の満足度を左右する重要な要素です。

3-3. サステナブルパッケージの進化

脱プラスチックの流れを受け、紙素材への代替や、リサイクル材の使用が加速しています。しかし、環境配慮だけを訴求しても、使い勝手や保存性が劣れば消費者は離れてしまいます。

  • 機能と環境の両立: 内容物の保護というパッケージ本来の機能を損なわずに、環境負荷を低減する構造設計(エンジニアリング)が求められます。
  • ミニマルデザイン: 印刷インクの使用量を減らす、ラベルをなくす(ラベルレス)といった引き算のデザインが、環境配慮と洗練された美しさを両立させます。

3-4. 83Designの視点:検証用プロトタイピングによる「ノイズ排除」

パッケージデザインのリニューアルや新商品開発において、「デザイン案は良いが、本当に売れるか不安」という声は尽きません。

83Designでは、「検証用プロトタイピング」を用いて、デザインの仮説検証を行います。単なる絵(レンダリング)ではなく、実物に近いモックアップを作成し、実際の棚に並べたり、ターゲットユーザーに触れてもらったりすることで、「手触り」「重量感」「情報の読みやすさ」などを検証します。

Point: 検証段階でデザインのクオリティ(完成度)を意図的に上げることでノイズ(雑音)を排除し、商品のコンセプトやパッケージの構造そのものの価値を正確にテストすることができます。

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4. 分野を横断する成功法則:デザインエンジニアリングによる「具体化」

モビリティ、アパレル、パッケージと異なる分野を見てきましたが、デザインが直面する課題と、その解決策には共通点があります。それは、「抽象的な強みやアイデア」を「具体的な顧客体験(UX)」に翻訳する力が求められているということです。

4-1. 見えない価値を愛されるカタチへ

多くの企業が、「技術」や「素材」という見えない価値(Seeds)を持っています。しかし、それが市場で受け入れられるためには、ユーザーが直感的に価値を感じられる「カタチ(製品・サービス・体験)」へと変換する必要があります。

83Designが提唱するデザインエンジニアリングのアプローチは、以下のプロセスでこの変換を実現します。

  1. 着想(Ideation): 「JUMP」の手法を用いて、技術と社会変化を掛け合わせ、常識に囚われない未来の仮説を立てる。
  2. 定義(Definition): 誰にどのような体験を提供するか、UX要件と技術要件をセットで定義する(STAIRS UP)。
  3. 検証(Verification): ノイズを排除した高精度なプロトタイプで、仮説の真偽を問う。
  4. 事業化(Business Modeling): エコシステム全体をデザインし、持続可能なビジネスモデルを構築する。

4-2. アブダクション(仮説形成)による推進力

不確実性の高い新規事業や新分野への挑戦において、過去のデータ分析(演繹や帰納)だけでは正解にたどり着けないことがあります。そこで重要になるのが、アブダクション(仮説形成)です。

「もし、こうなったら素晴らしいのではないか?」という仮説をデザインの力で具現化し、手を動かしながら検証を繰り返すことで、イノベーションへの道筋を切り拓きます。

まとめ

モビリティ、ファッション、パッケージの各分野において、デザインは単なる装飾を超え、体験設計、社会課題解決、ビジネスモデル構築の手段となっています。

  • モビリティ: 「移動の質」を再定義し、未来のライフスタイルを描く。
  • ファッション: 循環型モデルへの転換と、新素材の可能性を拓く。
  • パッケージ: 瞬間の視覚伝達と、開封体験を通じたブランド構築。

これらの実現には、技術的な実現性(Feasibility)、ビジネスとしての持続性(Viability)、そして人々の欲求(Desirability)を高度に統合するデザインエンジニアリングの視点が不可欠です。

83Designは、御社の持つ技術やアイデアを、市場で愛される具体的なカタチへと翻訳するパートナーです。新規事業の立ち上げや、既存製品のリブランディングにおいて、「何を作るべきか」の段階から並走し、事業の成功を支援します。


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