83Design

83Design Official Website

サービスデザイン事例|4つの業界から学ぶ「体験」を「価値」に変える成功法則


優れた技術や製品を持っているにもかかわらず、なぜか市場で選ばれない。その原因の多くは、製品単体の機能ではなく、顧客がその製品を通じて得る「一連の体験(サービス)」の設計不足にあります。

サービスデザインとは、製品、システム、人、空間など、顧客とのあらゆる接点を統合的に設計し、顧客体験(CX)とビジネス価値を最大化するアプローチです。

この記事では、医療、公共交通、金融、レジャーという4つの主要分野におけるサービスデザインの事例と成功のポイントを解説します。また、私たち83Designが実践する、ハードウェアとソフトウェアを融合させた「デザインエンジニアリング」の視点から、事業化を成功させるための具体的なヒントを提供します。

サービスデザインとは?「モノ」から「コト」への転換

サービスデザインの本質は、顧客が課題を解決するまでの「時間の流れ」をデザインすることです。単に使いやすいアプリを作ることや、接客マニュアルを整備することだけではありません。

顧客がサービスを認知し、利用し、利用後に評価するまでの全てのプロセス(カスタマージャーニー)において、一貫した価値を提供し続ける仕組み作りが必要です。

以下の表は、従来の製品開発(プロダクトデザイン)とサービスデザインの視点の違いを整理したものです。

比較項目従来の製品開発(プロダクトデザイン)サービスデザイン
対象モノ(製品そのもの)コト(体験・プロセス全体)
時間軸購入時点がピーク利用前・利用中・利用後の継続的な関係
価値基準機能、スペック、品質満足度、解決スピード、心理的充足感
関与者開発者、デザイナー顧客、従業員、パートナー企業を含む全体
ゴール良い製品を作ること顧客の課題を持続的に解決すること

サービスデザインが重要視される背景

現代の市場では、機能的な差別化(スペック競争)が限界を迎えています。技術の差が見えにくくなる中で、顧客は「その製品を使って、自分の生活がどう快適になるか」という体験価値を基準に選ぶようになっています。

さらに、SaaS(Software as a Service)やサブスクリプションモデルの普及により、一度売って終わりではなく、使い続けてもらうための設計がビジネスの生命線となっています。

業界別サービスデザイン事例と成功のポイント

ここでは、サービスデザインが特に重要となる4つの業界に焦点を当て、その特徴と成功の鍵を解説します。

1. 公共交通機関のサービスデザイン:移動を「シームレス」にする

公共交通の分野では、MaaS(Mobility as a Service)の考え方が進んでいます。電車、バス、タクシー、シェアサイクルなど、複数の移動手段を単一のサービスとして統合し、検索・予約・決済を一括で行う仕組みです。

  • 課題: 乗り換えの煩わしさ、待ち時間、支払い手段の分断。
  • 解決策: アプリによる統合だけでなく、駅やバス停(物理的なタッチポイント)のデザインも見直す。

2. 医療サービスのユーザー体験デザイン:不安を「安心」に変える

医療現場におけるサービスデザインは、患者の身体的・精神的な負担を軽減することに直結します。

  • 課題: 待ち時間の長さ、検査への恐怖心、複雑な手続き、院内の迷いやすさ。
  • 解決策: 予約システムのデジタル化だけでなく、検査機器の形状を威圧感のないデザインにする、院内ナビゲーションを直感的にするなどの包括的なアプローチ。
  • 成功の鍵: 「ペイシェント・ジャーニー(患者の体験旅程)」を描き、来院前から帰宅後までの感情の起伏に寄り添うこと。検査機器のデザインにおいては、冷たい機械的な印象を排除し、温かみのあるCMF(色・素材・仕上げ)を採用することで、患者の心拍数を下げ、スムーズな検査を可能にする事例もあります。

3. 金融サービスのデジタルデザイン:複雑さを「信頼」に変える

FinTechの台頭により、金融サービスは店舗からスマートフォンの中へと移行しました。ここでのデザインは「信頼性」と「使いやすさ」のバランスが問われます。

  • 課題: 専門用語の難解さ、セキュリティへの不安、操作ミスへの恐怖。
  • 解決策: 専門用語を日常言語に翻訳するUIコピーライティング、直感的な操作フロー、手続き完了の明確なフィードバック。
  • 成功の鍵: ユーザーが「自分のお金をコントロールできている」という自己効力感を持てるように設計することです。セキュリティを高めるために手順を複雑にするのではなく、生体認証などを活用して「簡単なのに安全」という体験を提供します。

4. レジャー・エンターテイメント施設のサービスデザイン:非日常への「没入」を作る

テーマパークや商業施設では、訪れる前のワクワク感から、滞在中の没入感、帰宅後の余韻までを一貫してデザインします。

  • 課題: 行列によるストレス、世界観の寸断(現実感のあるゴミ箱や案内板など)。
  • 解決策: 待ち時間をエンターテイメント化する空間設計、世界観に馴染む什器やウェアラブルデバイスの活用。
  • 成功の鍵: 「マジックバンド」のようなウェアラブルデバイスを活用し、チケット、決済、ホテルの鍵を一つに集約することで、財布を取り出すという「現実的な動作」を排除し、没入感を高める手法が有効です。

83Designのアプローチ:サービスを実現可能にする「デザインエンジニアリング」

優れたサービスデザインのアイデアがあっても、それを実現するための「ハードウェア(製品)」や「システム」が追いついていなければ、絵に描いた餅に終わります。

多くの新規事業が直面する壁は、**「コンセプトは良いが、それを支える具体的なモノやUIが未熟なため、顧客に価値が伝わらない」**という点です。これを私たちは「検証におけるノイズ」と呼んでいます。

「ノイズ」を排除し、本質的な価値を検証する

83Designでは、サービスデザインの仮説検証(プロトタイピング)において、以下の2つのアプローチを使い分けます。

  1. 紙芝居による検証(Phase 1-2):
    まだモノを作る段階ではない場合、ストーリーボードや簡易的なUIで「利用シーン」を疑似体験してもらい、サービスのコンセプト自体に需要があるかを問います。
  2. 完成品レベルのプロトタイプ(Phase 3):
    サービスの価値を検証する際、ハードウェアの持ち心地が悪かったり、UIの反応が遅かったりすると、ユーザーは「使いにくい」というノイズに気を取られ、サービスの本質的な価値を評価できません。私たちはデザインの力で「ノイズ」を排除した高忠実度なプロトタイプを作成し、正確な検証を可能にします。

自社SaaS「MOTHMOTH」の開発事例

私たち自身も、デザイン業務のプロジェクト管理における課題を解決するために、SaaSアプリ「MOTHMOTH」を自社開発しています。

  • 問い: 複数のプロジェクトが同時進行する中で、従来のアプリでは全体像の把握が難しく、「今日、何をすべきか」の判断がつきにくいこと。また、管理者・経営層と現場が、リソースや進捗の全体像、特に「誰が何時間作業しているのか」という情報を多面的に共有できないという課題。
  • 解決策: 「これまでになくシンプルに、すべてのタスクを一望できる」 UIデザイン。プロジェクトを横断したタスク全体を1画面で俯瞰できるようにし、タスクをカレンダーへドラッグ&ドロップすることでタイムブロッキングを自然に取り入れる手法。
  • 成果: 「今日やるべきこと」が明確化され、タスク優先度の判断が迅速化。タイムブロッキングとシングルタスク化の導入により、タスクの膨張を防ぎ、ユーザーが高い集中力を発揮できるようになる。また、タスク管理の透明性が高まり、プロジェクトごとの工数やメンバーの負荷が容易に可視化され、チーム全体のパフォーマンス管理が効果的に行えるようになる。

このように、自らサービス開発者として「Customer Problem Fit」から「Product Market Fit」までのプロセスを実践していることが、クライアント支援における強みとなっています。

まとめ

サービスデザインとは、顧客体験を中心に据え、それを実現するために必要な製品、システム、空間を逆算して設計するプロセスです。

  • 公共交通: ハード(駅・車両)とソフト(アプリ)の統合によるシームレス化。
  • 医療: 患者の感情ジャーニーに寄り添った安心感の醸成。
  • 金融: 複雑さを排除し、自己効力感と信頼を生むデザイン。
  • レジャー: ノイズを排除し、非日常への没入感を最大化。

成功するサービスデザインには、抽象的なコンセプトを具体的な「形」や「動き」に落とし込む力が不可欠です。83Designは、工業デザインで培った「具現化する力」と、ビジネス視点の「戦略設計」を掛け合わせ、貴社の新しいサービス開発を支援します。


工業デザインに関するご相談は83Designへ

新規事業の立ち上げや、既存サービスのUX改善をご検討中ですか?

83Designでは、企画段階のコンセプト立案から、プロトタイピング、量産製品のデザインまで一貫してサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら