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モビリティデザインの最新トレンドと未来:移動を「体験」へと再定義する戦略


現代社会において、移動の概念はかつてないスピードで進化しています。単なる「地点間の移動手段」であった乗り物は、自動運転技術や電動化(EV化)、コネクテッド技術の発展により、生活空間の一部へと変容しつつあります。

本記事では、モビリティデザインの最新トレンドから、3〜5年後の未来に向けたデザイン戦略までを網羅的に解説します。技術(シーズ)をどのように市場価値のある「移動体験」へと翻訳すべきか、その具体的な手法を紐解いていきましょう。


1. モビリティデザインの再定義:広義の設計が求められる理由

現在のモビリティ業界は、100年に一度の変革期と言われる「CASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)」の波の中にあります。この変化の中で、デザインに求められる役割はスペック競争から「どのような時間を過ごせるか」という価値競争へとシフトしました。

モビリティデザインの対象領域

現代のモビリティデザインとは、車両そのものの造形にとどまらず、移動に付随する「体験(UX)」や「サービス」、さらにはそれらを取り巻く「インフラ・社会システム」までを一貫して設計することを指します。

領域対象デザインの焦点
プロダクト(ハード)車両、充電器、パーソナルモビリティ造形美、空力性能、居住性、エルゴノミクス
インターフェース(UI/UX)HMI(操作系)、アプリ、インフォテインメント直感的な操作、視認性、シームレスな接続
サービス(エコシステム)カーシェア、MaaS、ラストワンマイル支援利便性、収益モデル、社会課題の解決

工業デザインの観点では、これらの要素を分断せず、一つの「体験」として統合することが、市場での競争優位性を築く鍵となります。


2. モビリティデザインにおける4つの最新トレンド

最新の市場動向を紐解くと、現在のモビリティデザインには以下の4つの大きな潮流が見て取れます。

① リビング空間化(第3の居住空間)

自動運転技術の進展(レベル3以上)により、運転というタスクから解放された車内は「リビング」や「オフィス」へと進化しています。シートの対面配置や大型ディスプレイによるエンターテインメント体験など、インテリアデザインの重要性がエクステリアを上回る「逆転現象」が起きているのが特徴です。

② サステナビリティとCMF戦略

EV化に伴い、環境負荷の低い素材(バイオプラスチック、リサイクルレザーなど)の採用が必須となっています。83Designでも重視している「CMF(Color, Material, Finish)」は、単なる色や素材の選定ではなく、ブランドの倫理性や先進性を象徴する重要な戦略となります。

③ パーソナライズされたHMI

音声認識やAR(拡張現実)ヘッドアップディスプレイ(HUD)を活用し、ドライバーの状況に応じた情報提示を行う次世代HMI(Human Machine Interface)が主流です。操作を意識させない「シームレスな体験」こそが、製品評価の分かれ目となります。

④ マイクロモビリティとラストワンマイル

都市部の渋滞緩和や高齢者の移動支援を目的とした、電動キックボードや超小型EVのデザインが急増しています。これらは街の景観との調和や、公共空間での「親しみやすさ」がデザインの鍵を握ります。


3. 未来を可視化する「フューチャー・キャスティング」アプローチ

多くの企業が直面するのが「優れた技術はあるが、3〜5年後の未来にそれがどう使われているか描けない」という壁です。83Designでは、単なるスケッチ作成ではなく、以下のプロセスで未来を可視化します。

  1. 技術ロードマップの分析:企業の持つコア技術が数年後にどのレベルに達するかを精査。
  2. 社会変化(PEST分析)との掛け合わせ:法規制や人口動態、環境意識の変化を予測。
  3. コンセプト・ビジュアライズ:理想の未来でその技術が「どのような製品群」として市場に存在しているかを、フォトリアルなCGや映像で描き出す。

この手法により、社内の意思決定者の脳内に「市場で成功しているイメージ」を直接植え付け、論理だけでは突破できない承認の壁を突破することが可能になります。

戦略的思考とデザインシンキング


4. モビリティ事業開発を成功に導く「5つの関門」対策

モビリティのような複雑な新規事業開発には、特有のボトルネックが存在します。83Designでは、各フェーズの課題に対し以下の解決策を提示しています。

  • 課題発見の関門:技術起点で「誰も欲しがらないもの」を作ってしまう。
    • 対策:未来の「面」を描く「コンセプト・ビジュアライズ」。
  • 仕様策定の関門:機能スペックは高いが、使い勝手の悪い製品になる。
    • 対策:技術と体験をセットで定義する「UX要件定義」。
  • 仮説検証の関門:試作機の見た目の悪さ(ノイズ)により、価値が正当に評価されない。
    • 対策:価値を純粋抽出する「完成品レベルのプロトタイプ」。
  • 事業性の関門:売るチャネルがない、既存顧客と競合するなどのジレンマ。
    • 対策:ビジネスの座組をデザインする「エコシステム・ビルディング」。
  • 稟議の関門:スペック表だけではワクワク感が伝わらず、決裁が降りない。
    • 対策:確信に変える「フューチャー・キャスティング(動画・CG)」。

効果的なプロトタイピングと仮説検証プロセス


5. 独自手法:「JUMP」と「STAIRS UP」の使い分け

83Designでは、プロジェクトの状況やフェーズに応じて2つの独自の仮説生成手法を使い分けます。

JUMP(非連続な飛躍)

感覚的な発想や直感的な「こうかもしれない」という思い込みをポジティブに変換し、短時間で一気に具体性を上げる手法です。まだ市場にない全く新しい移動体験を生み出す初期フェーズで極めて有効です。

STAIRS UP(論理的な積み上げ)

Desirability(有用性)、Feasibility(実現可能性)、Viability(事業性)の3つのレンズで課題を分解し、着実にデザインを紡いでいく手法です。安全性や量産要件が厳しい産業用モビリティや、複雑なステークホルダーが絡む公共交通のデザインで効果を発揮します。


6. まとめ:技術を「移動体験」へと翻訳するために

モビリティデザインの未来は、車両という「モノ」のデザインから、移動という「時間と体験」のデザインへと完全に移行しました。リビング空間化やパーソナライズ、サステナビリティへの対応は、単なる表面的な装飾ではなく、事業戦略そのものと直結しています。

貴社の持つ優れた技術を、市場から切望される「製品・体験」へと翻訳するために、デザインエンジニアリングの視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

工業デザインの基礎から成功のポイントについては、以下のピラーページで詳しく解説しています。

工業デザインとは?製品分野別デザイン事例と成功のポイント


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