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工業デザイン事務所が「自社製品」を持つ意義とは?83Designのオリジナルプロダクト開発秘話とクライアントワークへの還元


多くの企業が新規事業や製品開発において、「良いアイデアはあるが形にならない」「技術はあるが市場ニーズと合わない」といった課題に直面しています。私たち83Designは、クライアントのこうした課題を解決する工業デザイン事務所であると同時に、自らリスクを負ってオリジナルプロダクトやSaaSの開発・販売を行う「メーカー(事業者)」としての顔も持っています。

なぜ、デザイン事務所がわざわざ手間とコストのかかる自社製品開発を行うのでしょうか。それは、自らが「産みの苦しみ」と「売る難しさ」を経験することでしか得られない、実践的な知見があるからです。

本記事では、83Designが手掛けるオリジナルプロダクト(自社開発製品)の事例と、その開発プロセスで得られた「事業者視点」のノウハウについて詳しく解説します。これから製品開発を行う企業担当者様や、パートナーとなるデザイン会社を探している方にとって、私たちの取り組みがどのような価値を提供できるのかをお伝えします。

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工業デザイン事務所における「自社製品(オリジナルプロダクト)」の位置づけ

一般的なデザイン事務所のビジネスモデルは、クライアントから依頼を受けてデザインを提供する「受託型(クライアントワーク)」が中心です。対して、自社製品開発は、自ら企画し、製造を手配し、在庫を持ち、販売チャネルを開拓しなければなりません。

私たち83Designがこの高リスクな領域にあえて取り組む理由は、単なる収益源の多角化だけではありません。最大の目的は、デザインエンジニアリングのアプローチを自ら実践し、その有効性を証明する「実験場」としての機能を重視しているからです。

受託ワークと自社製品開発の違い

受託ワークと自社製品開発には、決定的な視点の違いがあります。以下の表にその違いを整理しました。

比較項目受託ワーク(クライアントワーク)自社製品開発(オリジナルプロダクト)
意思決定クライアントの承認が必要自社ですべて決定(全責任を負う)
視点依頼要件の達成、提案力事業性(Viability)、持続可能性
コスト意識予算内での最大化1円単位の原価低減、在庫リスク管理
フィードバッククライアントからの評価市場(エンドユーザー)からの直接的な評価・売上
得られる知見様々な業界の知見、デザインスキル事業開発のリアリティ、泥臭い改善プロセス

自社製品開発を通じて、私たちは「きれいな絵を描く」だけでなく、「それが本当に売れるのか?」「製造コストは合うのか?」「どうやって顧客に届けるのか?」という、ビジネスの根幹に関わる問いと常に向き合っています。この経験が、クライアントワークにおける提案の「解像度」と「説得力」を飛躍的に高めています。

【事例1】プロジェクト管理SaaS「MOTHMOTH」の開発

83Designのオリジナルプロダクトの中でも、特に異色でありながら私たちの哲学を体現しているのが、プロジェクト管理SaaS「MOTHMOTH(モスモス)」です。これは物理的なプロダクト(モノ)ではなく、ソフトウェア(コト)ですが、工業デザインのアプローチを応用して開発されました。

開発のきっかけ:自社の課題(Pain)からの出発

MOTHMOTHの開発は、私たち自身の切実な課題からスタートしました。デザイン事務所では、複数のプロジェクトが同時並行で進み、多くのタスクやステークホルダーが複雑に絡み合います。既存のタスク管理ツールでは「全体像が見えにくい」「現場と経営層で視点が合わない」「属人化しやすい」といった問題がありました。

そこで私たちは、「複数プロジェクトが並走する状況でも、経営と現場が同じ視点で判断できる環境」を作るために、自社専用のツールの開発に着手しました。これがMOTHMOTHの始まりです。

デザインエンジニアリングによる開発プロセス

MOTHMOTHの開発には、私たちがクライアントワークで提供している「フィットジャーニー」や「プロトタイピング」の手法が全面的に取り入れられています。

  • 仮説立案(Hypothesis): 「1画面で全体像を俯瞰でき、今やるべきことが直感的にわかる環境があれば、判断力と行動力が上がるのではないか?」という仮説を立てました。
  • プロトタイピング: いきなり完成品を作るのではなく、まずは社内で使える最小限の機能(MVP)を開発し、自分たちがユーザーとなって使い込みました。
  • 検証(Verification): 社内での運用を通じて、「タスクの優先度判断がしやすくなった」「チームの動きに一貫性が生まれた」という効果を実証しました。

フィットジャーニーの実践

MOTHMOTHは現在も進化を続けていますが、その過程はまさに「フィットジャーニー」の実践そのものです。

  1. CPF (Customer Problem Fit): 自社の課題を通して、「複雑なプロジェクト管理の難しさ」という課題が確かに存在することを確認しました。
  2. PSF (Problem Solution Fit): その課題に対し、「視点を切り替えられるUI」「直感的な操作性」という解決策が有効であることを検証しました。
  3. SPF (Solution Product Fit): 解決策をSaaSというプロダクトとして実装し、安定稼働させました。
  4. PMF (Product Market Fit): 現在は、社外への提供も含め、市場に受け入れられるかどうかの検証と改善を繰り返しています。

この経験により、私たちはデジタルプロダクトのUI/UXデザインにおいても、表面的な装飾ではない「業務フローの本質を捉えた設計」が可能になりました。

Point: 自社製品開発は、自社のデザインメソッド(フィットジャーニーなど)の有効性を証明する最大の実績となります。

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【事例2】マテリアルと感性の実験「オリジナルプロダクト」

MOTHMOTHのようなデジタル領域だけでなく、もちろん物理的なプロダクトの開発も行っています。これらは、新しい素材の可能性を探る実験や、83Designのデザイン哲学である「心を動かす体験(Desirability)」を形にする試みです。

展示台や什器の自社開発

展示会などで使用する什器や展示台も、私たちは自社で設計・製作することがあります。これは単なるコスト削減ではなく、「自分たちの強みを最も効果的に見せるための舞台」をデザインするためです。

3Dプリンターや社内工房を活用し、「出力→確認→修正」のサイクルを高速で回しながら、機能性と美しさを兼ね備えた展示台を作り上げます。こうした「見せ方」までを含めたトータルデザインの経験は、クライアントの展示会ブースデザインや販促ツール提案にも直接活かされています。

プロダクトを通じたパートナーシップ

また、私たちはパートナー企業と共にオリジナルブランドの製品開発に関わることもあります。例えば「PLECO」のようなプロジェクトでは、素材メーカーや技術パートナーと連携し、新しいライフスタイルを提案する製品を生み出しています。

ここでは、単に形を作るだけでなく、素材の特性(例:生分解性、伸縮性など)を最大限に活かしつつ、ユーザーが愛着を持てるストーリーを紡ぐ力が求められます。

自社製品開発で得られる「3つの事業者視点」

これら自社製品の開発プロセスを通じて、私たち83Designには一般的なデザイン事務所にはない「3つの事業者視点」が蓄積されています。これこそが、私たちがクライアントに提供できる独自の価値の源泉です。

1. コストと製造のリアリティ(Feasibility & Viability)

自社でお金を出し、製造を手配することで、製造原価(COGS)や金型投資に対するシビアな感覚が養われます。「ここのR(角の丸み)を少し変えるだけでコストが下がる」「この構造なら組み立て工数が減らせる」といった、現場レベルのリアリティを持ったデザイン提案が可能になります。

デザインの美しさ(Desirability)だけでなく、技術的実現性(Feasibility)と事業的持続性(Viability)を同時に満たすバランス感覚は、この経験から生まれています。

2. 「売る」ことの難しさと出口戦略(Go to Market)

良いものを作れば売れるわけではありません。MOTHMOTHの開発・運用を通じて、私たちは「どうやって知ってもらうか」「どうやって使い続けてもらうか」というマーケティングやカスタマーサクセスの重要性を痛感しました。

この経験があるからこそ、クライアントに対して「製品を作って終わり」ではなく、その後の販路開拓、プロモーション動画の制作、パッケージデザイン、さらにはビジネスモデルの構築(エコシステム・ビルディング)までを含めた「出口戦略」を提案できるのです。

3. 組織と意思決定の壁(Internal Communication)

新しい製品を開発する際には、必ず社内の合意形成や意思決定の壁にぶつかります。「本当にこれに投資していいのか?」「仕様はどうするのか?」という議論は、どの企業でも起こることです。

私たちは自社プロジェクトでその葛藤を経験しているため、クライアント企業の担当者様が社内で直面する「稟議の壁」や「部門間の対立」を深く理解できます。その上で、社内説得に必要な材料(フォトリアルなCG、具体的な数値検証、未来を描いたコンセプトムービーなど)を的確に用意し、プロジェクトを前に進めるための支援を行います。

その知見はどうクライアントワークに活きるか?

自社製品開発で得た「痛み」と「知見」は、そのままクライアントワークの品質に直結します。83Designに依頼するメリットは、単に「かっこいいデザイン」が上がってくることだけではありません。

「絵に描いた餅」にしない実行力

私たちは、実現不可能な夢物語を提案しません。技術的な制約、コストの壁、市場の厳しさを知っているからこそ、その制約の中で最大限の価値を生み出すための「実現可能なイノベーション」を提案します。

「3Dモデリング」や「試作(プロトタイプ)」を早期から活用し、あえて早い段階で失敗や課題を洗い出すスタイルも、自社開発で培った「手戻りを防ぐ知恵」に基づいています。

「共創パートナー」としての共感と覚悟

私たちは、クライアントを「発注者」、自分たちを「受注者」とは捉えていません。同じゴールを目指す「パートナー」として接します。

新規事業の立ち上げや新製品開発は、孤独で不安な道のりです。私たちはそのプレッシャーを理解しています。だからこそ、単なる代行業者ではなく、事業の成功に対してコミットし、時には耳の痛い指摘も含めて、本質的な議論ができる関係性を築くことができます。

具体的な支援メニューへの反映

自社製品開発の経験は、以下の具体的な支援メニューにも反映されています。

  • ビジョン・ビジュアライズ: 将来の製品ラインナップを可視化し、迷いをなくす。
  • UX要件定義: 機能の前に「体験」を定義し、無駄な開発を防ぐ。
  • 検証用プロトタイピング: コア価値を検証するための最適な試作を作る。
  • エコシステム・ビルディング: 製品単体ではなく、ビジネス全体の座組を設計する。
  • フューチャー・キャスティング: 決裁者の心を動かすための、未来の成功イメージを映像化する。

これらの手法は、教科書的な知識ではなく、私たちが自ら実践し、磨き上げてきた生きたノウハウです。

まとめ

工業デザイン事務所が自社製品を持つこと。それは、デザインの力を自ら証明し、ビジネスの荒波を乗り越えるための実践的なトレーニングでもあります。

83Designは、MOTHMOTHやオリジナルプロダクトの開発を通じて得た「事業者としてのリアリティ」を武器に、クライアントの皆様の事業開発を強力に支援します。

「技術はあるが事業化できない」「アイデアを形にできない」「社内の合意が得られない」といった課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちは、デザイナーであると同時に、皆様と同じ「挑戦者」として、課題解決に伴走します。

工業デザインの基礎や、他分野のデザイン事例について詳しく知りたい方は、以下のピラーページもぜひご覧ください。

工業デザインとは?製品分野別デザイン事例と成功のポイント

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