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【開発エピソード】実現したかったのは、「新しい希望のカタチ」。概念と物理の狭間で、アクリルの限界に挑む。

はじめまして。モノづくりを楽しみ、本気で没頭する会社、83Designです。

モノづくりにおいて私たちが大切にしているのは、“ワンチームで楽しむ”こと。 ワンチームというのは、私たちを選んでくださるクライアント様、生産ラインを担う職人さん、このモノづくりの過程に関わるすべての人たちを示します。 創造者みんなの想いが込められて、はじめて良いプロダクトができる。そのプロダクトがユーザーの手にわたり、あたたかみや想いが伝播する。

今回は、そんな手触り感あるモノづくりの過程をご紹介するストーリーです。

テーマは、『グッドデザイン・ニューホープ賞』のトロフィー開発。 既存の権威ある賞に対し、次世代のデザイナーたちへ贈られる「新しい希望(New Hope)」をどう形にするか。 「概念的な美しさ」を追求する電通のアートディレクションチームと、それを「物理的な現実」として着地させる83Design。両者がその専門性を掛け合わせ、共鳴しながら駆け抜けたプロジェクトの裏側を、株式会社電通の堤様、関口様、そして83Designの近藤が振り返ります。

https://newhope.g-mark.org

登場人物

堤 裕紀さま(株式会社電通 / アートディレクター) 

グッドデザイン・ニューホープ賞の立ち上げから参画し、ブランディング全体を統括。「新しい世代のための賞」というビジョンを掲げ、ロゴからトロフィーまで一貫した世界観の構築を主導した。

関口 遼さま(株式会社電通 / アートディレクター) 

プロダクトデザインのバックグラウンドを持つアートディレクター。グラフィックと立体の両方の視点を持ち、トロフィー制作の実務面をリード。83Designとの共創において重要なハブとなった。

近藤 耀司(株式会社83Design / デザイナー) 

83Designのデザイナー。「若手のための賞」というコンセプトに共感し、製造面でのサポートを担当。アクリル加工の限界に挑み、工場との調整や実現可能な構造の提案に奔走した。

聞き手:木谷 響(株式会社83Design)

以後、敬称略


第1章:すべての始まりは「次世代への希望」から

木谷: 本日はお集まりいただきありがとうございます。あのプロジェクトから少し時間が経ちましたが、改めて当時の熱量を振り返れたらと思います。まずは、このプロジェクトが立ち上がった経緯から教えていただけますか?

堤: 全ては、グッドデザイン賞の中に「新しい世代のための賞」を新設するという構想から始まりました。「グッドデザイン・ニューホープ賞」というネーミングが決まり、そこからロゴデザイン、ツール展開、そして受賞者に手渡されるトロフィーまで、トータルでブランドを作り上げていく必要がありました 。 僕が全体のアートディレクションを担当したのですが、ロゴが決まった後、いざ「トロフィー」という立体物を作るフェーズに入った時、改めてチーム編成を考えたんです。僕たちの会社(電通)には、プロダクト制作の専門家はそれほど多くありませんから 。

関口: そこで僕に声がかかったんです。僕はもともとプロダクトデザインのバックグラウンドを持っていて、電通社内では少し珍しいタイプでした。グラフィックだけでなく、立体のこともわかる人間として、トロフィー制作の実務をリードすることになりました 。

堤: ただ、実際に「モノ」として高品質に定着させるには、やはりプロフェッショナルな知見と、製造現場との強いパイプが必要です。そこで、以前から他の案件でも信頼関係のあった83Designさんに声をかけさせてもらいました 。

木谷: 83Designの近藤さんは、当時この話を聞いた時、率直にどう思いましたか?

近藤: 正直に言うと、驚きと少しの不安が入り混じっていましたね(笑)。 まず「若者向けの賞を作る」という新しい試み自体には、すごくワクワクしました。ただ、今回の依頼内容は、ゼロからデザインを提案するというよりは、電通さんが描く世界観をどう実現するかという「生産サポート」の側面が強かった。普段、僕たちは「提案」から入ることが多いので、デザインそのものをしないことへの難しさや、自分たちがどこまで力になれるのかという不安はありました 。

関口: 僕も当時はまだ入社して1年経っていないくらいの若手でしたから、どう進めればいいか手探りの部分もありました。でも、だからこそ83Designさんと一緒に動けることに期待感がありました 。

堤: この賞自体が「新しい世代(ニューホープ)」のためのものですからね。作り手側も、ベテランだけで固めるのではなく、関口や近藤さんのような若いメンバーが中心になって、若手の感性で作っていくことが重要だったんです。その意味で、このチーム編成は必然だったのかもしれません 。


第2章:アイデアの飛躍、「空飛ぶトロフィー」から「閃光」へ

木谷: コンセプトワークはどのように進んでいったのでしょうか?

堤: まずロゴの話をすると、グッドデザイン賞という誰もが知る権威ある賞に対して、新しい世代が反応するような「チャレンジングな刺激」を与えたいと考えていました。そこで生まれたのが、光や閃光をイメージした「N」のモチーフです。グッドデザイン賞の「Gマーク」と並んだ時に、新しい風を感じさせるようなエッジの効いたデザインを目指しました 。

関口: トロフィーのデザイン検討は、この「チャレンジングなロゴ」をどう立体化するか、という点と、賞のコンセプトをどう体現するか、という2つの方向から進めました 。

近藤: 初期のブレストは、本当に自由で楽しかったですよね(笑)。かなりぶっ飛んだアイデアもたくさん出ました。

関口: ありましたね。「受賞者同士がその場で喜びを共有できるように」といって、トロフィーがコップの形をしていて乾杯できる案とか 。

近藤: あとは「トロフィーを投げ合う」とか(笑)。

関口: そうそう。「希望」は誰かの手に渡っていくものだ、みたいな文脈で「ボール」みたいな案もありましたね 。あとは物理的に浮かせるとか 。

堤: 最終的には、やはり「希望」や「閃光」というコンセプトに立ち返りました。「光が射してくる」「発光しているような見え方」を目指そうと。ロゴを上面から見た時はその形に見えるけれど、正面から見ると光の筋のように見える、そんなグラデーションの表現に行き着きました 。

木谷: 素材をアクリルに決めた理由は?

関口: 予算的な制約で金属加工が難しかったという現実的な理由や本家のトロフィーがアクリルというもあったのですが、、やはりアクリルの持つ透明感や、光との親和性が今回のコンセプトに最も合っていたからです 。

近藤: ここからが83Designの本当の出番でした。コンセプトは決まったけれど、それを物理的にどう作るか。「ただの絵」で終わらせず、現実のプロダクトとして成立させるための戦いが始まりました 。


第3章:製造の壁 – 「歪み」と「濃度」との闘い

木谷: 「戦い」という言葉が出ましたが、実際の製造プロセスはかなり過酷だったようですね。

関口:はい、思い通りにいかないことの連続でした。一番の壁は、アクリル特有の「歪み」と、グラデーションの「色の濃度」のコントロールです 。

近藤: そうですね。コンセプトである「閃光」を表現するために、無色透明、または赤透明なアクリルの中に白のグラデーションを入れるのですが、この濃度の調整が本当にシビアで。 色が濃すぎると、透明感が失われてただの「白い塊」に見えてしまう。逆に薄すぎると、今度は色が飛んでしまってロゴの形が見えなくなるんです 。

関口: 僕たちが「これくらいの色味で」と指定しても、実際の工場ではそう簡単にはいきません。工場の方に「数値をコントロールしてほしい」と相談しても、最終的には、データや数値だけでは割り切れない職人の緻密な感覚と、長年の経験値が不可欠であることがわかりました。このコンセプトを実現するために、現場との粘り強いチューニングには時間をかけましたね(笑)。

近藤: さらに問題だったのが「歪み」です。初期の形状案では、アクリルの成形時に圧力と熱がかかって歪みが出たり、最悪の場合は割れてしまう可能性が高いことがわかりました 。 「この形状は作れない」「リスクが高すぎる」という工場の意見に対して、僕たちがどう食い下がるか。ただ「やってください」と言うだけでは動いてもらえません。

関口: そこで83Designさんが、工場の方々と膝を突き合わせてディスカッションしてくれたんですよね。

近藤: はい。工場の担当者の方から「複数のパーツを分けて接着するのではなく、大きな塊として作ってから削り出すことで、圧力を分散させてはどうか」という提案を引き出すことができました 。 これは、僕たちデザイナーだけで考えていても出てこない発想でした。現場に行き、職人さんの声を聞き、こちらの実現したい想いをぶつけることで初めて見えた突破口でした。

関口: 設計者や工場の方は、品質とリスクを考慮して慎重な判断をされる傾向があります。そこを、83Designさんが『こうすればできるんじゃないか』『この方法ならリスクを回避できる』と、専門的な知見を持って粘り強く交渉してくれたのは本当に大きかったです。

堤: スケジュールもかなりタイトでしたよね。納品した次の日がもう授賞式という 。

関口: 本当にギリギリでした(笑)。授賞式当日まで、完成品がどうなっているか誰も見れていなかったくらいで 。でも、そういった極限の制約の中で、コンセプトである「概念的な美しさ」と、製造上の「物理的な制約」をうまく混ぜ合わせることができたのは、このチームだったからこそだと思います 。


第4章:互いの「常識」を超えて – 広告とプロダクトの交差点

木谷: 今回の協業を通じて、お互いの文化の違いや、新しい発見はありましたか?

近藤: それはもう、たくさんありました(笑)。僕たち83Designは普段、メーカーさんのインハウスデザイナーの方とお仕事することが多いので、今回のように広告代理店のアートディレクターの方々とご一緒するのはとても新鮮でした。 特に印象的だったのは、プレゼンのスタイルです 。

関口: というと?

近藤: 僕たちや代表の矢野(83Design)は、打ち合わせの際、すぐに「モノ(試作品)」を先方の担当者の目の前に持っていきたがるんです。「これです!見てください!」って(笑)。モノの完成度が全てだと思っている節がある 。 でも、ある打ち合わせで、僕たちが先方の担当者のすぐ隣まで近寄って行って、至近距離でモノのディテールを説明し始めたことがあって。それを見て堤さんが「いきなり距離感近すぎてヒヤヒヤした」とおっしゃって(笑)。

関口: ありましたね(笑)。

近藤: それが僕にとってはカルチャーショックであり、大きな学びでした。「モノ」そのものの魅力ももちろん大事ですが、そこに至るまでのストーリーや、ブランド全体の世界観をどう伝えるか。相手にどう受け取ってもらうかを設計する「伝え方」のプロフェッショナルの視点に触れられたのは、すごく勉強になりました 。

関口: 逆に僕は、83Designさんの「突破力」に助けられました。電通側だけでは、世界観やイメージ作りまではできても、素材の選定や具体的な製造方法、コスト感といったリアリティのあるアイデアが出てきにくいんです。 そこにプロダクトデザイナーとしての専門的な視点が入ることで、アイデアがただの絵空事にならず、地面に着地できたのだと思います 。

堤: 僕は、このプロジェクトに関わった全員が「やりがい」を感じられたことが一番良かったと思っています。 授賞式で、学生たちがトロフィーを手にして喜んでいる姿を見た時、あるいはSNSで彼らがトロフィーの写真をアップして喜んでいる反応を見た時。「ああ、やってよかったな」と心から思いました 。 僕たちが苦労して作ったアクリルの塊が、新しい世代の手に渡り、彼らの「希望」の象徴になっている。その実感をダイレクトに得られたことが、何よりの成果です。


第5章:未来へのメッセージ

木谷: 最後に、今後デザイン業界を目指す方や、これから新しいモノづくりに挑戦しようとしている方へメッセージをお願いします。

関口: 今回のプロジェクトのように、異なる専門性を持つ人たちが集まることで、一人では決して到達できない場所にたどり着けると感じました。 自分の領域に閉じこもらず、他流試合を楽しむ姿勢が大切だと思います。プロダクトとグラフィック、概念と物理、それらが混ざり合う場所にこそ、新しい価値が生まれるはずです 。

近藤: 「制約」があるからこそ、面白いものが生まれる。今回はまさにそうでした。 物理的な制約、予算の制約、スケジュールの制約。それらをネガティブに捉えるのではなく、「どうすればそれを面白がれるか」「どうすれば乗り越えられるか」をチームで知恵を出し合って考える。そのプロセス自体を楽しんでほしいですね 。

堤: このトロフィーが、これからの未来を作る若いデザイナーたちの背中を押す存在になれば嬉しいです。そして私たち自身も、彼らに負けないよう、常に新しい「希望」をデザインしていきたいと思います 。


私たちと一緒に、想いをカタチにしませんか?

83Designが目指すのは、誰もが”楽しい”と感じるモノづくりです。 今回のプロジェクトのように、私たちはクライアント様やパートナー様と「ワンチーム」になり、概念的な想いを物理的なカタチへと落とし込むプロセスを大切にしています。

「実現したいコンセプトはあるけれど、製造のハードルが高い」 「新しいプロダクト開発に挑戦したいが、何から手をつければいいかわからない」 「自社の技術を活かして、新しいブランドを立ち上げたい」 「物理的な制約を、アイデアで突破したい」

そんな想いをお持ちの企業様・担当者様、ぜひ一度お話しませんか? 私たちは、ただ図面を引くだけのデザイン事務所ではありません。 工場の職人さんと膝を突き合わせ、素材の限界に挑み、あなたの描く「概念」を、手触りのある「現実」へと定着させるパートナーです。

批判的思考を忘れずに、時には徹底的にふざけ合いながら。 あなたの想いを、私たち83Designが本気で、そして最高に楽しみながらカタチにします。

まずはお気軽にご相談ください。

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